E-Lab. 〜小学校英語専科教員のブログ〜

E-Lab. 〜元小学校英語専科教員のブログ〜

2019年度から3年間小学校英語専科教員だった先生のブログ。小学校英語やICT教育の実践記事が中心です。

これは読んでおこう!小学校英語におススメの本 18選

 教師にとって新しい考え方を取り入れたり、実践の裏付けとなる理論を知り、自分自身をアップデートし続けることはとても大事なことです。

 小学校英語に関する研修はまだまだ少なく、各地で行われているセミナーや研究会になかなか毎回参加するのも難しい方も多いでしょう。(僕もその一人です。)

 しかし、本でしたら、自分のペースで様々な実践や理論を学ぶことができます。特に、長期休みなどの時間がある時を利用して、様々な本からインプットしておくことはとても有意義だと思います。

 年度初めにも同じような記事を書いたのですが、今回は今年度に入ってから読んだ書籍も加え、2020年末時点の「これは読んでおいた方がいい!」という本を集めてみました。

 ぜひ、参考にしていただければと思います。

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1.英語の授業づくりに関する書籍

①学習指導要領 解説 外国語活動・外国語編(文部科学省

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2020年度から本実施となる学習指導要領の解説編。

小学校の授業は、この学習指導要領の目標や内容などをもとに行われることになっており、授業づくりの際の拠り所になるので、手元に置いておきたい。

文部科学省のHPからもpdf版のダウンロードが可能。

小学校学習指導要領解説:文部科学省

 

②小学校外国語活動・外国語活動研修ガイドブック(文部科学省

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新学習指導要領をもとに、どのように授業を進めればよいのかをより具体的に、文科省がまとめたのがこの冊子になる。

 

中学年補助教材「Let's Try」や高学年移行期間教材「WeCan」の単元をもとに、具体的な単元計画や指導のポイントが記されている。

 

小学校外国語活動・外国語研修ガイドブック:文部科学省

③基本が分かる外国語活動・外国語科の授業(外国語科実践研究会 編著)

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新学習指導要領で狙いたいことがよくわかる一冊。

①②の2冊をさらに具現化した内容となっており、イラストや写真を多用しているため、授業の流れをイメージしやすい。3~6年の各学年の単元計画と授業案が一本ずつ掲載されています。

これから外国語活動を始める方におすすめです。

 

④小学校で英語を教えるためのミニマム・エッセンシャルズ(酒井英樹・瀧沢雄一・亘理陽一 編著)

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大学のテキストとしても使われる書籍なので、読むのは少し難解かもしれませんが、理論的な背景知識も幅広く勉強したいという方にはおすすめの一冊です。

 

「文字の読み書き」「絵本の活用」「異文化理解」などの項もあり、英語教育法の中で、特に小学校英語に関わりの深い部分をまとめてあります。

 

⑤「学ぶ・教える・考える」ための実践的英語科教育法(酒井英樹・廣森友人・吉田達弘 編著)

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大学のテキストとして書かれた書籍ですが、非常に読み進めやすいつくりになっていて、小学校の先生方にもおすすめできます。

第二言語習得」「動機付け」「学習指導要領の変遷」など広く学べる一冊です。

小学校だけでなく、中学高校の英語教育についても網羅されている。新学習指導要領や最新の知見がうまく取り入れられており、より詳しく知りたい方におすすめです。

 

小学校英語教育ハンドブック ー理論と実践ー(JES20周年記念誌編集委員会 編)

 

JES(小学校英語教育学会)が20周年記念として刊行した1冊。

学会が編集しているだけあって、前半には理論がまとめてあり、後半には実践がまとめてあります。内容としても、言語習得理論から指導論まで幅広い内容を押さえています。少し難しいなと感じるところがあるかもしれませんが、個人的には、きちんと先行研究などが載っているので、そこを追うことで理論的背景を押さえることができるなと思いました。

 

2.学習評価に関する書籍

①「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料(国立教育政策研究所

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2020年3月に国立教育政策研究所から出された学習評価に関する資料です。

具体的な事例を用いて、どのように外国語科での評価をしていけばよいのかがまとめられています。指導要領と合わせて必ず目を通しておきたい。

東洋館出版から販売されていますが、下記サイトからもダウンロード可です。

指導資料・事例集:国立教育政策研究所 National Institute for Educational Policy Research

 

② 小学校外国語活動&外国語の新学習評価ハンドブック(瀧沢広人)

学習評価の3観点「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」について事例をもとに説明されています。

具体的な評価事例はもちろん、それぞれの単元のルーブリック例や振り返りカード例やテスト例も掲載されているので、とても参考になります。

 

小学校英語「5領域」評価事例集(池田勝久 編)

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理論と実践(事例)とのバランスがとても良い本です。
前半では、指導要領と「指導と評価の一体化に関する資料」をもとに詳しく学習評価について説明されています。Q&Aで特に現場の教師が気になるポイントについても詳しく説明されていて、かゆいところに手が届きます。

後半では、実際に先進校で行われた各領域の事例をもとに、実践内容と評価方法とそれに対する有識者のコメントが載っており、非常にわかりやすい1冊になっています。

 

3.Small Talkや話すこと[やりとり]に関する書籍

①英語教師のためのTeacher’s Talk & Small Talk入門(瀧沢広人)

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新学習指導要領において話すことの技能が[発表]と[やりとり]の2領域に分かれました。Small Talkはこのやりとりするための力をつけていくための活動です。

どう進めるのか、どんなトピックがあるかを丁寧に書いてある本です。40個ものトピックが載っているので、授業でも取り入れられる話題があると思います。

②自分の本当の気持ちを「考えながら話す」小学校英語授業(山田誠志)

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岐阜県教委の指導主事で、現在は文部科学省教科調査官を務める山田誠志さんの著書。岐阜県の中心校では、Small Talkの実践を通じて、「考えながら話す」力を伸ばそうとしています。その理論からノウハウまでがつまった1冊です。

 

3.文字指導・音指導に関する書籍

①これからの英語の文字指導(手島 良)

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再来年度からアルファベット指導が中学で行われなくなると考えると、小学校で外国語を指導する先生にとっては今必要な知識の一つではないでしょうか。

中学教師向きですが、かなり丁寧に指導法が詳述されているだけでなく、100p近いハンドアウトの無料ダウンロードも嬉しいです。

小学校英語の文字指導 ~リタラシー指導の理論~(アレン玉井 光江)

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小学校英語に限定した文字指導の指導と実践がまとめられている。特に文字と音を結びつけるための指導について書かれています。理論については著者の論文からの引用も多く、難しい箇所もあります。しかし、具体的な活動やワークシート例なども紹介されているので、イメージしやすいです。

 

③ だれでもできる 英語の音と文字の指導(山本玲子・田縁眞弓)

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小学校の担任の先生でもできる英語の文字指導と謳っているだけあって、小学校英語の文字と音の指導理論や方法についてわかりやすく体系的にまとめてあります。
特に下記のKEETメソッドの7つのステップはとても大切な視点だなと思います。

A. アルファベットの形の認識と名称読みができる
B. アルファベットの音読みがわかる
C. 単語が音素で成り立っていることを認識する
D. 単語が読める(という認識を持つ)―トップダウンボトムアップ指導
E. アルファベットの大文字・小文字を4線上に書ける
F. 語や定型文を筆写する
G. オリジナルの文章を書いてみる


ローマ字とアルファベット指導との関連についても深掘りしているのもよいです。

 

 

4.特別支援教育やICT活用 

多感覚を生かして学ぶ 小学校英語ユニバーサルデザイン(竹田契市 監修)

学校には、色々な得意・不得意を持った子どもが一つの教室で勉強しています。

中には、なかなか英語の授業についていけない子もいます。そんな子ども達の気持ちが少しわかるかもしれない、そんな1冊です。ワーキングメモリ、明示的指導、段階的指導などとても勉強になりました。

小学校英語×ICT 楽しいを引き出す活動アイディア60(東口貴彰)

Rabbitsアプリでも有名な東口貴彰先生の著書で、一人一台端末がくるのが待ち遠しくなる一冊。
高学年30事例、中学年30事例と様々なアイディアが載っているので、これならできそうというものも多いです。単なる視覚支援や興味付けではなく、小学校英語でつけたいコミュニケーションの力を身に付けるための効果的な方法という視点のアイディアが多く参考になります。

5.番外編

小学校英語のジレンマ(寺沢拓敬)

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小学校英語がどのように教科化の道を辿ってきたかが詳述した一冊。

教育再生会議のような官邸主導で教育政策が決定されることにより、学習環境を整えることなく話が進んでしまい、今まさにそのツケを払っているのだなというのを感じました。

 

②子どもの未来が変わる英語の教科書(正頭英和)

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 「AI時代の英語教育はどうあるべきか。」そんなことを考えさせられる一冊です。

読みながら思ったことは、英語を通して資質・能力(本でいうと問題発見力、行動力など…)を育てることだなぁということ。 

 

おわりに

これまで2020年末までに読んだ本の中から、英語教育に携わる先生方にぜひ読んでほしいなと思った本達を紹介しました。2021年以降はさらに実際の実践と関連させた書籍が登場してくることと思います。

教室での実践(アウトプット)に加えて、書籍などでのインプットをしていくことで自身の知識や見方・考え方を常にアップデートしていける教師でありたいなと思います。

 
汗マーク

【教材シェア】所見文入力支援Excelシート

以前Twitterで、中学年向けの「外国語活動の所見文入力支援シート」を投稿しました。

 

 

ファイル自体はDMくださった方やFacebookグループで公開させていただいたのですが、今回コロナ禍の影響で苦労されている先生方の少しでも助けになればと思い、ブログでも公開(ダウンロード可)したいと思います。

 

使い方は以下の通りです。(ダウンロード用リンクは最下部にあります。)

 

 

1.クラス・名簿を入力する

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最初に学年クラスと名前を入力してください。

名前は名簿などからコピー&ペーストでも大丈夫です。

 

2.所見文例一覧を修正する。

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各UNIT6つずつ文例を入力できるようにしてありますので、それぞれの学校にあった例文を作成してください。

 

「指導と評価の一体化」において、大事なのはご自身の授業での目標や評価規準に合致した所見文をつくるということだと考えています。こういった子どもの姿が見られれば、目標を達成できているなとわかるような文だといいですよね。

 

とりあえず僕が作成した例文が4つずつ入っていますので、それをそのまま使っていただいてもかまいませんが、あまり推敲もしていないので変なところも多々あると思います。そのまま使用する際は、自己責任でお願いします。

 

3-1.所見文選択【方法①:リスト選択】

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 所見文を選んでいきますが、2つ方法を用意したので、やりやすいやり方で使ってください。

 1つ目の方法は、リスト選択方式です。ユニットを選んだ後に、【▼】で一番合致する文例を選びます。ただし、文例が長い場合は、終わりまで表示されないというデメリットがあります。

 

3-2.所見文選択【方法②:番号入力選択】

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もう1つの方法は例文一覧の番号を入力する方法です。

何番の例文を入力するかはっきりしている場合は、こちらの方法の方が早いと思います。

 

4.ダウンロード

ダウンロードや使用に許可は要りませんし、各学校内で共有していただくことは構いませんが、SNSやHPなどでのインターネット上での再配布(改変しての再配布含む)はご遠慮ください。

 

活用いただけた際には、コメントやDM(Twitter)などいただけると励みになります。

 

ダウンロードは下記リンクよりダウンロードしてください。

 

3年生 Let'sTry1用ファイル

drive.google.com

 

4年生 Let'sTry2用 ファイル

drive.google.com

 

多忙な先生方の少しでも助けになればうれしいです。

小学校英語の学習評価② ~外国語科の評価は3観点?5領域?~

新学習指導要領の実施に伴って、「テストはする必要があるの?」「成績はどうしたらいいの?」といった声をよく聞きます。これまでの外国語活動とは異なり、外国語科になると観点別評価をし、評定をつけなければなりません。おそらく通知表でも同じだと思います。では、外国語科の評価はどうしたらよいのでしょうか?

 

何回かにわけて、小学校英語の学習評価についてまとめていきたいと思います。

 

これまでのテーマ

小学校英語の学習評価① ~評価は何のためにするのか?~

 

今回のテーマは「評価の観点は3観点なのか?5領域なのか?」という点です。

 

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【新学習指導要領ではどの教科も3観点での評価】

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 新学習指導要領では、どの教科も、目標を【知識及び技能】【思考力・判断力・表現力等】【「学びに向かう力,人間性】の3つの柱で示しており、各教科の目標もそれに合わせて3つの柱で示されています。

 また、目標に対応するように、観点別学習状況評価の観点は「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つとなっています(上図※)。

※これについては学習評価の在り方ハンドブック(国立教育政策研究所)に詳しく書いてあります。

【外国語科における目標は3つの柱で明示】

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 もちろん、外国語科においても、教科の目標が3つの柱で示されています。

(1)外国語の音声や文字,語彙,表現,文構造,言語の働きなどについて, 日本語と外国語との違いに気付き,これらの知識を理解するとともに,読 むこと,書くことに慣れ親しみ,聞くこと,読むこと,話すこと,書くこ とによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる基礎的な技能を身 に付けるようにする。

 

(2)コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,身近で簡単 な事柄について,聞いたり話したりするとともに,音声で十分に慣れ親し んだ外国語の語彙や基本的な表現を推測しながら読んだり,語順を意識し ながら書いたりして,自分の考えや気持ちなどを伝え合うことができる基 礎的な力を養う。

 

(3)外国語の背景にある文化に対する理解を深め,他者に配慮しながら,主 体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。

(学習指導要領 外国語活動・外国語科より)

 (1)が【知識及び技能】、(2)が【思考力・判断力・表現力等】、(3)が【「学びに向かう力,人間性】に関連しています。

 そして他教科と同様に、評価をする際の観点は「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つとなっており、指導要録の観点別評価もこれと同様です。

 

【英語の目標は4技能5領域で示されている】

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 外国語科における評価の難しさは、その下位目標である英語の目標が4技能(5領域)で示されていることだと個人的には思います。

 

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 具体的には、上図のような目標が書かれています。そのため、目標を考える際には、外国語科の3観点の目標と、5領域の目標をかけ合わせる形で目標を考える必要があります。

【評価規準は3観点×5領域=15】

 そうなると、評価規準を考える際にも、やはり3観点×5領域=15項目について考える必要があります。

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 これは、細かく分かれているので考えやすい反面、少し複雑になってしまっているようにも思われます。しかし、この15項目全てを1つの単元で評価していくのではなく、単元の言語材料や言語活動、子どもの既習知識などを考慮しながら、2年間を通じて軽重をつけながら指導と評価をしていくと考えた方がよいでしょう。

 具体的には各単元において、「重点的にどの領域に力を入れるかを単元計画を考える段階ではっきりさせておく」「一つの活動を評価する際に、知識・技能の側面をどこで見るのか、思考・判断・表現の側面をどこで見るのかといった観点ごとの視点をはっきりさせておく」といった工夫が必要になるでしょう。

【まとめ】

今回は主に、評価の観点についてまとめました。他教科と違い、英語は4技能5領域で目標が書かれているので、3観点で評価をしつつも、4技能をバランスよく指導していくという視点も併せてもっておく必要がありそうです。