E-Lab. 〜小学校英語専科教員のブログ〜

E-Lab. 〜元小学校英語専科教員のブログ〜

2019年度から3年間小学校英語専科教員だった先生のブログ。小学校英語やICT教育の実践記事が中心です。

小学校英語専科になるみなさんへ③ ~ 小学校英語に関する書籍紹介 ~

 来月から、2020年度、新学習指導要領がいよいよスタートとなります。それにともない、4月からは小学校英語専科(外国語専科)が1000人増となり、全国で3000人強の専科教員が配置されることになります。このシリーズでは、そんな専科の先生方に向けた記事を書いていきたいと思います。

 前回の記事では、4月のスタート時にするべきことに(ToDo)ついて紹介しました。

 

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  3回目となる今回は、小学校英語にも関わるおすすめの書籍について書いていきます。

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1.英語の授業づくりに関する書籍

①学習指導要領 解説 外国語活動・外国語編

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2020年度から本実施となる学習指導要領の解説編。

小学校の授業は、この学習指導要領の目標や内容などをもとに行われることになっており、授業づくりの際の拠り所になるので、手元に置いておきたい。

文部科学省のHPからもpdf版のダウンロードが可能。

小学校学習指導要領解説:文部科学省

 

②小学校外国語活動・外国語活動研修ガイドブック

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新学習指導要領をもとに、どのように授業を進めればよいのかをより具体的に、文科省がまとめたのがこの冊子になる。

 

中学年補助教材「Let's Try」や高学年移行期間教材「WeCan」の単元をもとに、具体的な単元計画や指導のポイントが記されている。

 

小学校外国語活動・外国語研修ガイドブック:文部科学省

③基本が分かる外国語活動・外国語科の授業 

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新学習指導要領で狙いたいことがよくわかる一冊。

①②の2冊をさらに具現化した内容となっており、イラストや写真を多用しているため、授業の流れをイメージしやすい。3~6年の各学年の単元計画と授業案が一本ずつ掲載されています。

これから外国語活動を始める方におすすめです。

 

④小学校で英語を教えるためのミニマム・エッセンシャルズ

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大学のテキストとしても使われる書籍なので、読むのは少し難解かもしれませんが、理論的な背景知識も幅広く勉強したいという方にはおすすめの一冊です。

 

 

「文字の読み書き」「絵本の活用」「異文化理解」などの項もあり、英語教育法の中で、特に小学校英語に関わりの深い部分をまとめてあります。

 

⑤「学ぶ・教える・考える」ための実践的英語科教育法

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大学のテキストとして書かれた書籍ですが、非常に読み進めやすいつくりになっていて、小学校の先生方にもおすすめできます。

第二言語習得」「動機付け」「学習指導要領の変遷」など広く学べる一冊です。

小学校だけでなく、中学高校の英語教育についても網羅されている。新学習指導要領や最新の知見がうまく取り入れられており、より詳しく知りたい方におすすめです。

 

⑥「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料

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2020年3月に国立教育政策研究所から出された学習評価に関する資料です。

具体的な事例を用いて、どのように外国語科での評価をしていけばよいのかがまとめられています。指導要領と合わせて必ず目を通しておきたい。

まだ販売はされていませんが、下記サイトよりダウンロード可です。

指導資料・事例集:国立教育政策研究所 National Institute for Educational Policy Research

2.Small Talkや話すこと[やりとり]に関する書籍

①英語教師のためのTeacher’s Talk & Small Talk入門(瀧沢広人)

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新学習指導要領において話すことの技能が[発表]と[やりとり]の2領域に分かれました。Small Talkはこのやりとりするための力をつけていくための活動です。

どう進めるのか、どんなトピックがあるかを丁寧に書いてある本です。40個ものトピックが載っているので、授業でも取り入れられる話題があると思います。

②自分の本当の気持ちを「考えながら話す」小学校英語授業(山田誠志)

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岐阜県教委の指導主事で、現在は文部科学省教科調査官を務める山田誠志さんの著書。岐阜県の中心校では、Small Talkの実践を通じて、「考えながら話す」力を伸ばそうとしています。その理論からノウハウまでがつまった1冊です。

 

3.文字指導・音指導に関する書籍

①これからの英語の文字指導(手島 良)

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再来年度からアルファベット指導が中学で行われなくなると考えると、小学校で外国語を指導する先生にとっては今必要な知識の一つではないでしょうか。

中学教師向きですが、かなり丁寧に指導法が詳述されているだけでなく、100p近いハンドアウトの無料ダウンロードも嬉しいです。

小学校英語の文字指導 ~リタラシー指導の理論~(アレン玉井 光江)

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小学校英語に限定した文字指導の指導と実践がまとめられている。特に文字と音を結びつけるための指導について書かれている。理論については著者の論文からの引用も多く、難しい箇所もある。しかし、具体的な活動やワークシート例なども紹介されているので、イメージしやすい。

 

③ドリル式 フォニックス<発音>練習Book(ジュミック今井)

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小学校英語においてはアルファベットフォニックス(アルファベットの音)については指導をしていくべき内容となっています。(指導要領ではフォニックスという言葉は使っていませんが…)そのためにフォニックスに関する書籍も手元に一冊あるとよいでしょう。

この本は具体的な発音の仕方がイラストと言葉で書かれているので、子どもたちに指導する際にも使えます。

 

4.番外編

小学校英語のジレンマ(寺沢拓敬)

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小学校英語がどのように教科化の道を辿ってきたかが詳述した一冊。

教育再生会議のような官邸主導で教育政策が決定されることにより、学習環境を整えることなく話が進んでしまい、今まさにそのツケを払っているのだなというのを感じました。

 

②子どもの未来が変わる英語の教科書(正頭英和)

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 「AI時代の英語教育はどうあるべきか。」そんなことを考えさせられる一冊です。

読みながら思ったことは、英語を通して資質・能力(本でいうと問題発見力、行動力など…)を育てることだなぁということ。 

 

 

 
汗マーク

小学校英語専科になるみなさんへ② ~4月の授業スタートまでにしたいこと~

※2020/03/18 追記

 来月から、2020年度、新学習指導要領がいよいよスタートとなります。それにともない、4月からは小学校英語専科(外国語専科)が1000人増となり、全国で3000人強の専科教員が配置されることになります。このシリーズでは、そんな専科の先生方に向けた記事を書いていきたいと思います。

 前回の記事では、英語専科の先生方がぶつかりうる「所属感」をテーマに記事を書きました。

 

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  2回目となる今回は、4月の授業開始までにしておくとよいことについて書いていきます。下の画像はそれらをまとめたものですが、一つ一つについてもう少し詳しく見ていきましょう。

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教務主任と時間割や打ち合わせ時間、年間計画などについて確認

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まずは詳しい時間割や年間計画の情報を各学校から聞いておきましょう。

時間割については、スタートするとなかなか変更ができないので、不都合を感じる場合は、できるだけ早いタイミングで伝えた方がよいです。

要望を出すものとしては、例えば次のようなものが考えられます。

  ・複数クラスある場合は、学年が続いていた方がやりやすい

  ・授業準備の時間は1時間目にあると印刷などの準備ができてよい

ただ、時間割は、他にも制約がたくさんあるので要望しても無理な場合も多いです。 

 

ALT(またはJTE)との打ち合わせ

 初めての授業の時に、ALTと「はじめまして」では、大変です。

 授業前に一度はALTと打ち合わせの時間をとりましょう。

 打ち合わせる内容としては、

  ・打ち合わせ時間の確認

  ・学校の決まりごとの確認

  ・授業の役割分担

  ・最初の授業の流れの確認

といったことがあげられます。

 

各学校の備品やICT環境などの確認

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  これはできるだけ早く確認しておいてください。大型TVの有無やピクチャーカードの有無などによって、用意しなければならないものや購入しなければならないものが変わってきます。また、外国語教材の置き場所を確認しておくという意味でも必要な作業です。

 特に、兼務する学校がある場合には、授業開始前に一度は学校を訪れて確認しておくとよいと思います。

 

担当学年の予算に英語の授業で必要なものを入れてもらう

 学年費で購入すべきもの(基本的には児童一人一人に還るもの)があれば、各学年の予算案に組み入れてもらいます。年度の途中で「あっ、これがほしい!」と思っても、お金がなければ購入はできませんので、これは確実に。

 購入するものとして考えられるのは、、、

  • フラットファイル(プリントなどを綴じる用)
  • アルファベットワーク
  • 業者テスト
  • 英語のノート
  • シール

などが考えられます。例としてこれらのものを上げましたが、購入したら最後まで使用しなければなりませんので、慎重に検討してください。ちなみに、僕の場合は、『フラットファイル』『教科書準拠のアルファベットワーク』のみ予算案に入れてもらいました。

 

消耗品で購入してほしいものを事務に相談

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 文房具などの消耗品については、事務に相談して買ってもらいましょう。

  •  ラミネートフィルム 
  •  目玉クリップ
  •  マグネット
  •  カード入れる用の袋
  •  教材整理用のケース

 などが購入するものとしては考えられます。

 

備品で購入してもらいたいものを事務に相談

 学年費は子ども一人一人が使用するものですが、こちらは学校の備品として購入したいものです。備品で購入するものについては、予算が通ってから執行できるようになるので、購入までには少し時間がかかると思っておいた方がよいです。

  • ピクチャーカード
  • 掛図
  • 四線黒板

などが購入するものとして考えられます。

 

個人購入しておいた方がよいものの準備

 学校や保護者に購入してもらうものではない個人で所有するもので、必要なものがあれば自分で買いましょう。

  • 教材などを運ぶためのカゴ
  • 〇つけ用の赤ペン
  • スタンプ

などが購入するものとして考えられます。

 

教務必携やExcelなどに1学期の授業スケジュールを入れておく

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 英語専科は、特に兼務をしていると、非常に時間割が複雑になるので、「どの学校で」「どのUnitを」「いつやるか」がわかるようにしておくとよいです。僕の場合は、最初は教務必携に書いていたのですが、最終的には全体をより見通すことのできるExcelを使って管理するようになりました(上写真)。

 この際、各学校の年間行事計画を見て、授業がつぶれる日などをはっきりさせておくとよいです。

 

担当学年の英語の授業のUnit1の単元計画の作成

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 僕は、どの学年のどの単元であっても、その単元に入る前に単元計画をつくることを基本としています。これは①自分自身が単元のはじめと終わりをイメージして、見通しを持って指導ができる、②日本人の英語支援員さんとの打ち合わせに使用できる、③日付とクラスを記入しておけばそれぞれのクラスの進度を把握できるといったよさがあります。とりあえずUnit1の単元計画ができていれば4月は乗り切ることができます。

 0からつくるのは大変なので、指導書なども大いに参考にしましょう

 

Unit1で使うワークシートや絵カードなどの作成・印刷

 授業が固まったら、教材準備に取りかかり印刷できるものはしておきましょう。特に、兼務で専科をやるとなると、まとまった教材準備の時間がとれません。ですので、極力印刷できるものは、早めにしておくのが吉です。

 英語教室で授業をやる際には、名札をつくる場合があるかもしれませんので、そのためのテンプレートを作成しておくのもよいでしょう。

 

通知表の記入の仕方について教務主任に確認しておく

 通知表の形式などによって、評価の際の力の入れどころが変わってくるかと思います。高学年は数値評価になりますが、中学年は所見文であることが多いので、毎学期記述するのかどうかなど確認しておくとよいです。もし毎学期所見文を書くとなると、1学期からすこしずつ評価資料を溜めておかないときついです。

 

以上、今回は、4月の授業スタートまでにしておきたいことをまとめました。

また、他にもあれば、追記していきます。

小学校英語専科になるみなさんへ① ~所属感を手に入れる~

 来月から、2020年度、新学習指導要領がいよいよスタートとなります。それにともない、4月からは小学校英語専科(外国語専科)が1000人増となり、全国で3000人強の専科教員が配置されることになります。(校内で教科担当をつけるケースも加えるともっと多くなるかと思います。)

 英語専科加配については、こちらの記事に詳しく書いてあります。

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  僕自身も昨年度、英語専科加配の内示をもらってからは不安でいっぱいでした。そして、1学期の間は、精神的にも肉体的にもかなりいっぱいいっぱいの日々を過ごしました。そこで、この記事では、1年間英語専科をやってきた僕から、新しく小学校英語専科になるみなさんに伝えたいことを書きたいと思います。今回は『所属感』がテーマです。

 

※あくまで自分の経験をベースに書いているので、それぞれの自治体や状況によって差があるかもしれません。

 

 

所属感を手に入れることの大切さ

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 英語専科をやる先生方にとって、大きな障壁になりうるのが「所属感の欠如」だと思います。

 

 上の図のマズローの5段階欲求でいうと「承認と愛の欲求」が満たされていないということです。そうすると、それより高次な自己承認欲求(自分で自分を認めてあげる)を満たす気にはなれないし、よりよい授業づくりをしようというような自己実現の欲求を満たそうとはならないでしょう。ですので、この「所属感」を得るということは仕事をする上で非常に大事なことなのです。

 

 僕の場合は、3年勤務した前任校を異動して、新しい学校で英語専科になりました。それもあって、なかなか所属感というのを得ることができませんでした。

 

 普通の異動であれば、4月当初であっても仕事の中で色々な職員と仕事をする機会が多くあります。例えば、学級担任であれば一緒に組む学年の先生たちと仕事をする中で、自然とお互いのことを知っていったりすることでしょう。

 

 しかし、専科はたったの一人。しかも僕の場合は、2校兼務で本務校には週に3日しかいません。その中で職員の中で信頼関係を築いていくのには相当時間がかかりました。

 

 また、前年度までは学年主任や研修主任や体育主任など学校運営に大きく携わる分掌を任される中で、自分自身のアイデンティティを確立してきたのですが、この年の分掌は外国語担当のみ。このギャップも、「自分は周りから楽な立場だと思われてるかも」「自分はこの学校に必要ないのかも」と自信を無くさせる要因になっていたと思います。

 

 もう一つは、自分の学級がないという点も所属感を失わせる原因の一つだったと思います。前年度は学級担任として自分のクラスというものがありました。思い返せば、そこでの子どもたちとの関係であったり、居心地のよさであったり、そういったものを一気に失ったことも大きな喪失感として感じる要因となっていたように思います。

 

 こうした理由から、(異動をして兼務をしながら)英語専科をやることは、所属感を失いやすく、また所属感を得るまでには相当の時間がかかる可能性があると考えられます。

どのように対処するか?

①本務校で分掌以外に手伝えることをもつ

 兼務をしていなくて、既に多くの分掌をもっている先生は、その仕事をするだけでも周りの先生方から感謝されると思います。

 

 しかし、僕のようにほとんど分掌がないという状況の場合は、理のない範囲で仕事を引き受けるといいかなと思います。あくまで、無理のない範囲でというのがポイントで、その仕事を引き受けたら残業が増えて教材研究ができなくなったというのでは本末転倒です。

 

 例えば、僕の場合は…

・4月当初の学級事務

・週に一度のHPの更新

・授業参観の前に昇降口の写真掲示の入れ替えをする(年3回)

・行事などの写真撮影

・掃除時間の職員室の掃除

 といったことを引き受けました。また、PC周りのことは多少知識があるので、PCのトラブル相談なども快く引き受けたりしました。

 

 できるだけ、自分の得意なことで、継続して無理なくできる仕事を受けておくとよいかなと思います。

②兼務校では所属感を無理して求めない

 これはもう割り切った考えなのですが、本務校と兼務校、どちらの学校でも所属感を求めていくと、かなり疲れます。しかも、滞在時間の短い兼務校でも所属感をつくっていくことはなかなか難しいなと思います。

 

 そんな場合は、兼務校に所属意識をそこまで求めないという逆転の発想をしてしまうのも一手です。そこに労力を使いすぎることは精神的にもよくないです。僕自身、1学期は本務校でも兼務校でも、同じくらい仕事を手伝ったりしていたのですが、体調を一度崩したことがありました。それからは、所属校では授業を中心とした仕事のみをやろうと決めました。それによって、だいぶ気持ちが楽になったということがありました。

 

 これには賛否があるかもしれませんが、専科に関わらずどんな立場であっても、仕事のウェイトの割り振りをすることは大事です。自分のキャパシティ(時間、体力、精神力)を鑑みて、どの仕事に重きをおいて一年仕事をしていくか割り振っておくことは必要なことだと思います。何はともあれ、体が資本なのです。倒れてしまったら元も子もありません。

まとめにかえて

 今回は、特に兼務の専科教員における「所属感の消失」という問題と、それに対する僕なりの対応策をまとめてみました。この記事を書きながら、専科になる前の自分はどうだったのだろうとも考えました。講師の先生であったり、級外の先生にきちんと感謝を伝えていたか?、仲間意識を持って仕事をしていたか?・・・もしかすると十分じゃなかったかもしれないなと思います。

 2つの対応策を書きましたが、一番の処方箋は周りの先生方からの言葉です。

「今日の英語の授業、子どもたち楽しそうでしたね。」

「いつもありがとうございます。」

 僕なんかは単純なので、こんな一言で1週間がんばろうという気持ちになります。

4月当初は管理職も、担任も、級外も、専科も忙しいのは重々承知ですが、お互いに温かい言葉が出てくるそんな職場であるといいなと思います。