小学校英語専科になるみなさんへ① ~所属感を手に入れる~
来月から、2020年度、新学習指導要領がいよいよスタートとなります。それにともない、4月からは小学校英語専科(外国語専科)が1000人増となり、全国で3000人強の専科教員が配置されることになります。(校内で教科担当をつけるケースも加えるともっと多くなるかと思います。)
英語専科加配については、こちらの記事に詳しく書いてあります。
僕自身も昨年度、英語専科加配の内示をもらってからは不安でいっぱいでした。そして、1学期の間は、精神的にも肉体的にもかなりいっぱいいっぱいの日々を過ごしました。そこで、この記事では、1年間英語専科をやってきた僕から、新しく小学校英語専科になるみなさんに伝えたいことを書きたいと思います。今回は『所属感』がテーマです。
※あくまで自分の経験をベースに書いているので、それぞれの自治体や状況によって差があるかもしれません。
所属感を手に入れることの大切さ
英語専科をやる先生方にとって、大きな障壁になりうるのが「所属感の欠如」だと思います。
上の図のマズローの5段階欲求でいうと「承認と愛の欲求」が満たされていないということです。そうすると、それより高次な自己承認欲求(自分で自分を認めてあげる)を満たす気にはなれないし、よりよい授業づくりをしようというような自己実現の欲求を満たそうとはならないでしょう。ですので、この「所属感」を得るということは仕事をする上で非常に大事なことなのです。
僕の場合は、3年勤務した前任校を異動して、新しい学校で英語専科になりました。それもあって、なかなか所属感というのを得ることができませんでした。
普通の異動であれば、4月当初であっても仕事の中で色々な職員と仕事をする機会が多くあります。例えば、学級担任であれば一緒に組む学年の先生たちと仕事をする中で、自然とお互いのことを知っていったりすることでしょう。
しかし、専科はたったの一人。しかも僕の場合は、2校兼務で本務校には週に3日しかいません。その中で職員の中で信頼関係を築いていくのには相当時間がかかりました。
また、前年度までは学年主任や研修主任や体育主任など学校運営に大きく携わる分掌を任される中で、自分自身のアイデンティティを確立してきたのですが、この年の分掌は外国語担当のみ。このギャップも、「自分は周りから楽な立場だと思われてるかも」「自分はこの学校に必要ないのかも」と自信を無くさせる要因になっていたと思います。
もう一つは、自分の学級がないという点も所属感を失わせる原因の一つだったと思います。前年度は学級担任として自分のクラスというものがありました。思い返せば、そこでの子どもたちとの関係であったり、居心地のよさであったり、そういったものを一気に失ったことも大きな喪失感として感じる要因となっていたように思います。
こうした理由から、(異動をして兼務をしながら)英語専科をやることは、所属感を失いやすく、また所属感を得るまでには相当の時間がかかる可能性があると考えられます。
どのように対処するか?
①本務校で分掌以外に手伝えることをもつ
兼務をしていなくて、既に多くの分掌をもっている先生は、その仕事をするだけでも周りの先生方から感謝されると思います。
しかし、僕のようにほとんど分掌がないという状況の場合は、無理のない範囲で仕事を引き受けるといいかなと思います。あくまで、無理のない範囲でというのがポイントで、その仕事を引き受けたら残業が増えて教材研究ができなくなったというのでは本末転倒です。
例えば、僕の場合は…
・4月当初の学級事務
・週に一度のHPの更新
・授業参観の前に昇降口の写真掲示の入れ替えをする(年3回)
・行事などの写真撮影
・掃除時間の職員室の掃除
といったことを引き受けました。また、PC周りのことは多少知識があるので、PCのトラブル相談なども快く引き受けたりしました。
できるだけ、自分の得意なことで、継続して無理なくできる仕事を受けておくとよいかなと思います。
②兼務校では所属感を無理して求めない
これはもう割り切った考えなのですが、本務校と兼務校、どちらの学校でも所属感を求めていくと、かなり疲れます。しかも、滞在時間の短い兼務校でも所属感をつくっていくことはなかなか難しいなと思います。
そんな場合は、兼務校に所属意識をそこまで求めないという逆転の発想をしてしまうのも一手です。そこに労力を使いすぎることは精神的にもよくないです。僕自身、1学期は本務校でも兼務校でも、同じくらい仕事を手伝ったりしていたのですが、体調を一度崩したことがありました。それからは、所属校では授業を中心とした仕事のみをやろうと決めました。それによって、だいぶ気持ちが楽になったということがありました。
これには賛否があるかもしれませんが、専科に関わらずどんな立場であっても、仕事のウェイトの割り振りをすることは大事です。自分のキャパシティ(時間、体力、精神力)を鑑みて、どの仕事に重きをおいて一年仕事をしていくか割り振っておくことは必要なことだと思います。何はともあれ、体が資本なのです。倒れてしまったら元も子もありません。
まとめにかえて
今回は、特に兼務の専科教員における「所属感の消失」という問題と、それに対する僕なりの対応策をまとめてみました。この記事を書きながら、専科になる前の自分はどうだったのだろうとも考えました。講師の先生であったり、級外の先生にきちんと感謝を伝えていたか?、仲間意識を持って仕事をしていたか?・・・もしかすると十分じゃなかったかもしれないなと思います。
2つの対応策を書きましたが、一番の処方箋は周りの先生方からの言葉です。
「今日の英語の授業、子どもたち楽しそうでしたね。」
「いつもありがとうございます。」
僕なんかは単純なので、こんな一言で1週間がんばろうという気持ちになります。
4月当初は管理職も、担任も、級外も、専科も忙しいのは重々承知ですが、お互いに温かい言葉が出てくるそんな職場であるといいなと思います。
NEW HORIZON Elementaryでの授業づくり② ~目標・学習活動・言語活動を見比べる~
2回目の今回は、NEW HORIZON Elementaryの各単元における①Our Goalと②Your Turn(表現に慣れる活動)と③Enjoy Communication(単元終末の言語活動)を見ていきたいと思います。
ちなみに1回目はこちら…
この①~③の3つを見ることで、NEW HORIZON Elementaryの特徴を掴むことができます。また、単元を構成する際に気をつけなければならないポイントも見えてきます。
5年生の各単元の3つの関連性を見てみると…
上記が5年生の①Our Goalと②Your Turnと③Enjoy Communicationをまとめた表です。Unit1~4、Unit6については、①→②→③と流れが明瞭であり、繋がっています。
一方でUnit5、7、8については、②Your Turnに③Enjoy Communicationでは直接使う必要のない(または少ない)表現に慣れる活動が設定されています。
例えばUnit8を見てみましょう。
Unit8では①Our Goalとして「あこがれの人について発表しよう」という目標が設定されています。そして、③Enjoy Communicationでは「ヒーローを紹介しよう」という言語活動が用意されていて、①と③がしっかりとつながっています。
一方で②Your Turnには「日常生活やあこがれの人についてたずね合おう」という活動が設定されています。じっくり見てみると、実はこの中の「日常生活」というのは必ずしもヒーロー紹介には必要のない言語材料であることがわかります。
Unit6やUint7も同じように、単元末の言語活動に使う必要のない言語材料がYour Turnに入っています。
6年生の各単元の3つの関連性を見てみると…
上記が6年生の①Our Goalと②Your Turnと③Enjoy Communicationをまとめた表です。Unit1・3・6・7については、①→②→③と流れが明瞭であり、繋がっています。
一方でUnit2・4・5・8については、①Our Goalと③Enjoy Communicationとの繋がりが明確でないものが多いです。
例えばUnit2を見てみます。
Unit2では①Our Goalとして「日常生活について伝え合おう」という目標が設定されており、③Enjoy Communicationでは「宝物を伝え合おう」という言語活動が用意されていて、①と③のつながりが不明です。実際の教科書では以下のような例文が用意されています。
① I live in Ueda inJapan.(住んでいるところ)
② I go to Naka Elementary School.(通っている学校)
③ I usually watch soccer games on Sundays.(よくすること)
④ My treasure is this soccer ball.(宝物)
④が宝物を紹介する文ですが、残念ながら①や②とのつながりはほとんどありません。
Unit4・5・8も同じように、Our Goalと単元末の言語活動がしっかりと一致していない印象を受けます。
このようなズレにどう対応するか
対応策1:単元を2つに分ける
5年のUnit8のような扱う言語材料が多すぎて、1つの単元末の言語活動では扱いきれない場合は、いっそのこと2つにわけるというのも手だと思います。
Unit8でしたら、「ぼく・私の一日をみんなに紹介しよう(3時間)」「ぼく・私のヒーローをみんなに紹介しよう(5時間)」というような感じです。
こうすることで目標(①)と言語材料(②)と言語活動(③)が一致した単元×2にすることができます。
対応策2:単元末の言語活動をもう一工夫する
6年生の単元はCLIL(Content and Language Integrated Learning:内容言語統合型学習)を意識した単元も多いため、どうしても目標(①)と言語活動(③)が一致しにくい傾向が見て取れます。これは、扱うテーマが大きい割に、使える表現などが少ないため、最終的に表現する内容が薄くなってしまうためだと考えられます。
こうしたことを防ぐためには、最終的な言語活動をよりテーマに近いものにしてあげることも効果的だと思います。例えばUnit5の場合、「地球に暮らす生き物について考える」ということを意識させるには、単に「食物連鎖について発表する」だけでなく、「地球上の絶滅危惧種にはどのような生き物がいるかを紹介しよう」というように単元末の言語活動もより深く問題について考えられるものにする必要があるかもしれません。
以上、今回は目標・学習活動・言語活動のズレがある単元もあることを知り、それを踏まえた単元構想をしていく方法について述べてきました。単純に教科書通りに前から進めると進めにくくなってしまう単元も、最初からこういったズレがあるということを知って単元を再構成しておくことでスムーズに授業をすることができると思います。
NEW HORIZON Elementaryでの授業づくり① ~Over the Horizonをどう扱うか~
新年度に向けて、少しずつ新しい教科書「NEW HORIZON Elementary」(東京書籍)の単元計画の作成を進めています。
作成に当たっては、まだ指導書がないので、市の教育委員会から児童用教科書を借りてきたり、東京書籍のHPから各種資料参考にするなどしています。
今回は授業づくりをしていく上で気をつけたいことなどをまとめていきたいと思います。
NEW HORIZON Elementaryの教科書の構成は?
東京書籍の教科書は、8つの単元(Unit1~8)と3つのまとめ単元(Check your steps)からできています。例えば5年生の1学期であれば、Unit1~3をやりその後でCheck Your Steps1をやるという感じになっています。
そして、各Unitは8時間構成となっており、Check Your Stepsは2時間構成となっています。時数にすると、8Unit×8時間+3Check Your Steps×2時間=70時間となります。
それぞれのUnitの構成は?
では、それぞれのUnitでは8時間をどう割り当てているのでしょうか。
詳しくは東京書籍のこちらのサイトで説明がされていますが、簡単に言うと、
①表現に出会う『Starting Out』に2時間
②表現を使って会話に慣れる『Your Turn』に2時間
③コミュニケーションを楽しむ『Enjoy Communication』に2時間
④世界を広げる『Over the Horizon』に2時間
となっています。
特徴的なのは、基本的には③の活動が単元終末の言語活動となるというところです。
4時間で表現に十分慣れ親しんで、残りの2時間でメインの言語活動に取り組むというのが基本の流れです。
では、④の『Over the Horizon』ってなんでしょうか?
Over the Horizonって何?
これがそのページですが、まるで資料集みたいですよね。
実は、その通りなんです。この2ページは資料ページという扱いになっています。
極論を言ってしまえば、授業時間内にすべて触れる必要はないのです。
これについてはHP上でもはっきりと『自習用にして単元の時間調整に使用することもできます。』と書いてあります。
ですので、この『Over the Horizon』をどう扱うかというのが一つ授業を考えていく際のポイントになりそうだと思っています。
Over the Horizonをどう扱うか?
例えば
4時間では充分に表現に慣れ親しめそうにないから、表現に慣れる時間をもう1時間増やしてOver the Horizonは1時間のみにする。
なんてこともできそうです。
実際にWeCanよりもUnit数が減っている東京書籍の教科書では、1Unitで扱う言語材料が増えているものも多く見られます。そのため4時間で表現に慣れ親しませるのは難しい場合も出てくる可能性があります。そんな時は無理に単元終末の言語活動に取り組ませるのではなく、1時間(または2時間)プラスして慣れるための時間をとることも可能なのです。
そんな風に『Over the Horizon』は柔軟に扱うことのできるゆとりの2時間という認識を持っておくことが大事かなと思います。
今回は『Over the Horizon』の扱いについてまとめてきました。教科書をそのまま教えるのではなく、あくまで教科書「で」教えるという意識を授業者側が持っていることが大事かなと思いました。