E-Lab. 〜小学校英語専科教員のブログ〜

E-Lab. 〜元小学校英語専科教員のブログ〜

2019年度から3年間小学校英語専科教員だった先生のブログ。小学校英語やICT教育の実践記事が中心です。

絵本を活用した授業【3年生 Let's Try1 Unit9 Who are you?】

 外国語活動の授業も3学期に入り、そろそろ3年生・4年生はUnit9の単元に入っていく教室もあるのではないでしょうか。3・4年生のUnit9はどちらも絵本単元となっています。今号では、3年生の授業を例に、絵本を活用した外国語活動の指導方法などについてお伝えします。

 どうして絵本なのか?

 絵本を活用した授業が外国語活動に取り入れられることになった背景には、中央教育審議会教育課程企画部会「論点整理」(平成27年8月26日)の提言などをふまえて、絵本教材「Hi friends! Story Books」が作成されたことがあります。文部科学省では絵本を活用して指導することについて、“言語習得において受信から発信、音声から文字という原則を踏まえれば、初めて外国語に触れる中学年外国語においては、良質のインプットを与えることがことさら重要”文部科学省 平成28年11月)であるとしています。

 また、絵本の活用方法について研究しているEllis & Brewster(2008)は、絵本を活用することの利点として、

  • 絵本は身近で覚えやすい文脈(context)の中で言語を導入するので、外国語学習への入門としては理想的である”
  • 絵本の内容に関連した多様な言語やアクティビティへと発展する足がかりや出発点ともなる”
  • 絵本は子供に適正なインプットを与えることができるので、教師は言語習得の理論に基づいた教授法を使って、絵本を教えることができる”

といった点をあげています。

使用する絵本教材は?

 今回の実践では、Let’s try1 UNIT9 “Who are you?”をもとに単元を構想したのですが、テキストでは、絵本の利点が十分にいかすことができないと考えました。1ページあたりの情報量が多かったり、テンポよく読み進めるのが難しいという理由からです。

 そこで補助教材(平成27年)の中にある“In the Autumn Forest”を絵本教材として利用することにしました。この教材は主人公の犬がかくれんぼのオニとなり、様々な動物たちを探していくお話で、お話の中には、①I see something ~(色や形などの特徴). ②Are you a ~(動物). ③Yes, I am. I’m a ~(動物). と言う3つの表現が繰り返し用いられています。実際にはこれらの表現以外に“Oh, my eyes.”のような体の部分を表す単語も出てくるが、その表現については触れないことにしました。

www.bunkei.co.jp

単元計画は?

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 上表が単元計画です。本来は、この単元は聞き慣れがメインの単元ではありますが、聴くだけでは意欲を持ち続けることが難しいこともあり、単元目標を『オリジナル絵本を作って、動物やその特徴について相手に伝わるように英語で言ったり、興味を持って聞いたりできるようになる。』とし、単元を貫く言語活動として『オリジナル絵本を作ってみんなに紹介しよう。』という活動を位置づけました。

絵本をどのように読むか?

 絵本を読むときには、一方的な読み聞かせにならないように注意しましょう。子どもとのやりとりを楽しみながら読み進めるとよいです。例えば、下のスクリプトは馬が隠れているイラストを見ながら子どもとやりとりしている場面です。

f:id:ninnin2222:20200118232052j:plainT: I see something shiny. I see something shiny.

光っている馬の歯を指しながら)What animal?

S:はい(6人の子が手を挙げる。)

T: S1。(指名する)

S1: It’s a horse.

S: Me too.

T: Are you a horse? 1,2(反復するよう促す)

S: Are you a horse.

T: Yes, I am. I’m a horse.(ページをめくる)f:id:ninnin2222:20200118232109j:plain

S: おー。かわいいー。(絵を見て口々に反応する)

 このように読み聞かせをしていくと、子どもたちは「次はどんな動物が出てくるんだろう」とわくわくしたり、何の動物が隠れているのか当てようとしたりし、次第に物語の世界に引き込まれていきます。また、Are you a ~?という表現を子どもと一緒に言うことで、絵本を聞きながら表現に慣れ親しむこともできます。

 読み終わった後には、“How many animals are there in this story?”と子どもたちに尋ねます。(こうした読み終わったあとの質問は内容を理解させるのに効果的です。)すると、子どもたちは絵本の内容を思い出しながら、指折り動物の数を数えはじめます。その後、何人かの子に発表をしてもらった後に、もう一度絵本のページをめくりながら何匹いたかを子どもたちと一緒に英語で数を数えて確認していきます。16匹とわかると、そんなにいたの!?と驚く子どもが多くいました。

  こうして、十分絵本に興味を持たせた後に、「みんなにもこの絵本みたいな絵本の1ページを作ってもらうからね。」と投げかけ、単元を貫く言語活動を子どもたちと共有します。

まとめ

 このように絵本を授業の中で活用していくことで、子どもたちは意味のある文脈の中で表現に慣れ親しむことができます。しかし、絵本の話に子どもたちを引き込んでいくためには、教師側の読み方もとても重要になってきます。ぜひ、授業で扱う前には、何度か練習をして授業での読み聞かせに挑みましょう。

 

参考文献

文部科学省 新学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編

文部科学省初等中等教育局国際教育課 次期学習指導要領に向けた指導力向上のための文部科学省作成 補助教材等について

Ellis, G., &Brewster, J. (著). 松香洋子・八田玄二・加藤佳子(翻訳).(2008).『先生、英語のお話を聞かせて!-小学校英語「読み聞かせ」ガイドブック』.東京:玉川大学出版部